STEP1 会社の仕組みを知る
そもそも会社とは?

日本の会社は「定款自治」。
会社の憲法である定款がどれだけ経営者のヴィジョンに沿っているかが事業の成功を左右する

会社の憲法「定款」について押さえておきたい基本情報

「定款」とは、会社の目的・組織・運営方法・株主の地位などについて定めた基本的なルールで、しばしば「会社の憲法」とも呼ばれます。定款は会社を設立するときに必ず作成しなければならない重要なもので、「定款自治」という言葉がある通り、会社の運営は定款に従って行われます。

定款の内容は原則、会社設立者である発起人が自由に決めることができますが、法的に決められた要素を盛り込む必要があります。また、決めた事柄を書面にまとめて会社に保存するだけでは何の力も持ちません。公証役場で公証人に証明をしてもらうことで、はじめて定款に効力が生じます。
この手続きを「定款の認証」といい、会社を設立するときは必ず定款の認証を行う必要があります。

会社設立に際して作られた最初の定款を「原始定款」と呼びます。認証された原始定款は、会社設立の手順の中でその後に行う「設立登記」の手続きに必要になります。設立登記をすることで、原始定款で定めた会社の商号・事業目的・住所・資本金などの基本的な情報が公に開示されます。

また現在は定款を電子文書で作成し、公証人に電子認証してもらうこともできます。このケースだと手続きのための印紙代が不要になりますが、電子証明書など必要な環境を整える必要がありますので、手間や資金が10万円以上かかることになります。

定款に「書かなくてはいけないこと」「書くとメリットがあること」ほか記載事項3つの要素

定款の内容は「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されます。

絶対的記載事項 必ず記載しなければならないもの
相対的記載事項 記載しなくてもよいが、記載しないと法的効力が認められないもの
任意的記載事項 記載しなくてもよいが、会社が意図を持ち基本事項として明文化したもの

このうち相対的記載事項と任意的記載事項については、ひとつも書かれていなくても定款が無効になることはありませんが、絶対的記載事項にひとつでも記載漏れがあると、公証役場で定款として認証してもらえないので注意が必要です。

絶対的記載事項

会社の目的 会社が行う事業の内容。原則として、定款に定められた以外の目的は事業として行えない。多くの場合、今後別の事業を行う可能性も考慮し、「それら各号に付帯する一切の業務」と付けておく。
商号 法律上の会社の名前。
本店所在地 法律上の所在地。実際の会社の場所とは必ずしも一致しない。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 1円としても株式会社を設立することができる。
発起人の氏名又は名称及び住所 そのまま、発起人の氏名又は名称及び住所を記載。

相対的記載事項の例

株式譲渡制限 好ましくない人物が株主になるリスクを回避する場合など、株式に譲渡制限をつける旨を記載。
取締役は株主限定 株主以外の人物が取締役になれないよう、身内だけで取締役を固めたい場合は記載。
取締役会・監査役・会計参与などの設置 株主総会と取締役以外の機関で設置するものは必ず記載。
役員の任期の延長 原則である「役員2年」「監査役4年」の任期を最長10年まで延長できる。
株主総会の招集期間の短縮 この規定がないと原則通り、開催日の1週間前までに招集通知を行わなくてはならない。
現物出資 現金でなく車やパソコンなどの現物を資本とするときは必ず記載。

任意的記載事項の例

取締役・監査役の人数・定時株主総会の招集時期や招集手続き・事業年度(決算期)…etc.

会社法で強化された「定款自治」の概念がもたらす自由な裁量と自己責任

それぞれの会社が作った定款に則り会社の運営をすることを「定款自治」といいます。
会社法ではこの定款自治の概念が重視されており、会社の意思決定の仕組み、発行株式に関する事柄など、会社の組織運営に関するさまざまな事項をかなり自由に会社側が決められるようになりました。例えばかつては認められなかった「取締役が1名の会社」「監査役を置かない会社」が現在では問題なく実現できます。

きちんとした手順を踏み定款で定めておけば自分たちでいろいろな規律を作れるようになり、自由度は広がりました。ただしその一方で、自己責任がともなうことも忘れてはいけません。たとえば「監査役を置かない会社」として設立した結果、取締役によって不正が行われてしまったとしても、それは監査役を置かないと決めた会社の自己責任である、ということです。

定款認証の前に「3大リスク」の防衛措置を実施しよう

小規模会社では社長が株式の多くを保有しているため、業務を行うのも社長、株主も社長というスタイルが一般的です。また取締役会を設置していなければ旧有限会社のような閉鎖的な組織となるので、定款により自由度が広がったとはいっても、設立時の定款の選択肢はそれほど多いわけではありません。

会社の規模が小さい場合はそれほど定款について神経質にならなくても大丈夫ですが、「取締役の任期を10年以上に延長するリスク」「役員重任登記を忘れてしまうリスク」「会計参与を設置した場合のリスク」をはじめ、会社の株主構成・機関設計の実態によってリスクが生じる可能性があることはあらかじめ理解し、設立時にきちんと対策をしておきましょう。
同時に会社が発展していくに従って、定款をきめ細やかに見直し変更を施していく意識を持っておくことも重要です。

01取締役の任期を10年に延長するリスク

かつては原則として2年だった取締役の任期が、定款にあらかじめ定めることによって10年に延長できるようになりました。これにより、役員重任登記の手間や費用がかからずにすむというメリットがありますが、同時に特定のリスクも背負うことになります。

例えば自分以外に役員がいるケースでは、役員の任期を10年に定めているとなかなかその役員を解任することができなくなります。社長がある取締役にやめてもらおうと思ったら、まず株主総会で出席者の過半数以上の賛成を得て解任の手続きを行います。
問題はその後です。
解任した取締役から会社に対して、解任によって生じた損害の賠償請求が起こされる可能性があります。

解任された取締役としては、任期満了までに得られるはずだった報酬がもらえなくなったために請求してくるのですが、仮に10年に設定しておいた任期の1年が過ぎたところで解任したら、残り9年分の報酬額を請求されることが可能性として考えられます。

対策

もちろん解任された取締役に、不正を働いたり会社に損害を与えたりといった明らかな落ち度があれば問題ありません。しかしそれ以外の正当な理由がないケースでの解任はリスクをはらんだものになってしまうのです。
短い任期にしておけば、その取締役に何か問題があったときにも任期満了にともなう退任という形で会社を去ってもらうことができます。

02役員重任登記を忘れてしまうリスク

役員の任期を10年にしておくと、登記を忘れてしまうことがあります。このような事務手続きは、短いサイクルならきちんと行うことが習慣づけられるのですが、会社を設立して10年経ち、はじめて役員重任登記を迎えるとなるとうっかりすることも考えられます。

これを忘れやすいのにはスケジュールも関係しています。役員重任登記は、決算日より2週間以内に行う必要があります。決算日から2週間といえば、大変多忙です。法人税等の納税をし、それ以前に確定申告書を提出するため顧問税理士等からこれまで1年間の業務活動について確認作業がなされる慌ただしい時期に当たります。

そういった煩雑な作業に紛れて登記を忘れてしまった場合、百万円以下の罰金が科せられます。

対策

毎年決算後に登記の有無を確認するなど、確認作業自体を毎年の習慣にするのもひとつの手です。また顧問税理士などに依頼しておくなど、何らか忘れない仕掛けを講じておくとよいでしょう。
任期を2年など短くする方法もありますが、登記の手数料がかかってしまうので、ただの登記忘れ防止の処置としては金銭的犠牲が大きいのであまりお勧めの方法ではありません。

03会計参与を設置した場合のリスク

会計参与は取締役と共同して決算書などの計算書類を作成する機関です。このとき会計参与と取締役の意見が一致していれば問題ないのですが、共同して作成するものなので一致しなかったときに問題が生じます。
社長であるあなたと、税理士もしくは公認会計士である会計参与の意見が食い違い、両者が譲らなかった場合、決算書は完成できません。定時株主総会も開催できませんし、経営の根幹業務が著しく滞ってしまいます。
どうしても意見の相違が解消できなかったときは、会計参与が辞任することが考えられます。
その場合、定款で会計参与の設置を記載していればそれを変更(削除)する手続きをとるか、後任の会計士を選ばなくてはなりません。

対策

毎月1回は会計参与と顔を合わせ経営状況について報告し意見を交わしていれば、決算時に意見が食い違うことは回避できるでしょう。会計参与には、通常の税務顧問料のほかに会計参与の報酬も支払いますので、それが無駄にならないよう辞任の結末は避けたいものです。

公証役場で行う「定款認証」は会社設立のひとつのクライマックス

定款が完成したら、公証役場に出向き、定款の認証を行います。何の問題もなく、その場で無事に認証されたら、後は資本金の払い込みを行い会社設立の前準備が全て終了となります。

認証を受ける際は、発起人全員で公証役場に出頭するのが原則ですが、発起人の委任状があれば、まったく関係のない第三者に代理人として手続きに行ってもらうことができます。
認証に必要なものは次のとおりです。

01定款3通

02発起人全員の印鑑証明書 (収入印紙の消印に使用します)

034万円の収入印紙 (郵便局などであらかじめ購入し、定款に貼らずに持参します)

04定款認証手数料など (5万円+定款謄本代約2000円)

05発起人の代理人が行く際は、委任状・代理人の印鑑証明書 (もし発起人が兼ねている場合は02の印鑑証明書を使用OK)

提出された定款は、その場で公証人によってチェックを受けます。混雑具合にもよりますが、15~30分程度は手続きにかかります。何も問題がなければ無事に定款は認証され、公証役場で保管される定款の表紙裏に収入印紙を貼って印鑑で1箇所に消印をします。
この定款は、公証役場で20年間保管されます。残りの2通はそれぞれ「会社保存用原本」「謄本」で、表紙に印でそのように記され返却されます。会社保存用は重要書類として保管し、謄本は登記申請のときに使います。

定款認証を行うときは、やはり緊張する方が多いものです。その場で厳しい審査や面談が行われるわけではなく、むしろ拍子抜けするほどあっさりした手続きですが、経営者となる覚悟を新たにするためでしょう。
会社設立まで、後もう少しです。

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